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2006/ Apr _ 16

ハートランド原宿。

原宿の「良き我々の時代」・・・

セレントラルアパートの窓越しから見えた教会も消え、

そのセントラルアパートも消え、

同潤会アパートも消え、

桜湯が消え、

蕾みから開花する花をカットバックで見るような変わりようのはげしい原宿

だが、新興を享受するというより、只々寂びる気持ちのほうが深い。

またひとつ消えていった。「改装のため、しばらく休みます」という張り紙

に一安心していたが再開されず、去年の3月「GHEE」がとうとう22年目で閉

店してしまった。

ちなみに「GHEE」とは、水牛の乳でつくったバターを煮詰めた「上澄み」の

インド式バターオイルのことだそうだ。

変貌する原宿で22年間も通い続けられる店が在ったということが希少に価す

るが、「GHEE」のカレーは、まさしくスパイスの悦楽を堪能できる独特無二

の代物である。それでいて、今どきの「うんちく」がまったくないのが良

い。その後あちこちのカレーを食するが22年間身体に染み付いた「GHEE」

のスパイスの妙は、悪女の深情けはかくありなんと思わせるものがあった。

ときどき思いだしては「GHEE」のカレーの話をしていると、事情通がいるも

のでワーカーズのOBの大木いぶが「GHEE」で20年間カレーをつくっていた

人が2年前に「サンシード」という店をもって、カレーをやっていますよと教

えてくれた。

「ファンシード」
渋谷区神宮前2-31-9 プリズム神宮前3f tel:03-5474-4368

さっそく出かけ1年ぶりに、いちばん贔屓にしていた「バターチキン」を食す

る。スパイスが一部入手できないのでと但し書きがつくが、まさしく「バ

ターチキン」との再会である。この「バターチキン」は、22年の深情けをた

ち切られないで、また焼けぽっくりに火がついてズルズルとこれからも惹き

ずられていくのだろう。

かっての「GHEE」は厨房を入れても3坪ほどの店で、肩を寄せ合っても10人

くらいで満席になる小さい店である。

それほど狭いスペースなのに、大きくどっしりとした天板がイタリア大理石

のテーブルがデーンと鎮座していた。

そのテープルが「ファンシード」の店の窓際にあるではないか。感涙する。

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界隈の風景になっていた原宿らしい小さな店がクローズしても、逸味を宴じ

てくれたテーブルが古き良き原宿の証人として息づいているのはウレシイ。

「GHEE」にまつわる色々な想いが去来する。

吉本ばななの「キッチン」の映画の田辺雄一役をつとめたのが「GHEE」でバ

イトをしていた松田ケイジ君で、すぐそばのニコル・ビルの地下の「パスタ

パスタ」で同じくバイトをしていたのが川原亜矢子、映画「キッチン」の主

役、準主役が目と鼻ほどの距離でキャスティングされたのも面白い。

当時、ニコル・ビルの3階に、アートスペースがあって、その一角に隠れ処と

いった趣きの素敵なカウンターバーがあった。催事のない時はガラーンとし

ているので、よくエレベーターで自転車を持ち込んで屋内自転車競争をして

いた。その3階にバイトがえりの川原亜矢子が息抜きにやって来た。

川原亜矢子という人は、接した限りではは、今では、バンプ ( 妖婦、悪女 ) の

キャラクターだが、当時はモデル業、芸能界をとても嫌っていて、映画

「キッチン」で演じたキャラクターのほうがふさわしい人だと今でも思って

いる。

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「ハートランド」を所望する。まだ「ハートランド」があったんだという感

じがある。たしか発売は20年くらい前だろう。それ以後お目にかかったこと

がなかつた。

当時ビールは「エビス」にしていた。「エビス」は、まだ今のような高級志

向でなく、一色刷りであか抜けてなく「養老の瀧」にお似合いのパッケージ

であった。理由は、麦芽とポップだけの只一つのビールだったからである。

その後アサヒ、サッポロ、サントリーガ相次いで雑穀なしの麦芽とホップだ

けのビールを市場参入させたが、キリンだけはダンマリをきめこんでいた。

海外への輸出ビールは、輸入国によっては雑穀入りはビールとして認めてな

かったので、国内ビール各社は輸出ビールに関してはどこも麦芽、ホップの

ビールを生産していて、国内の市場事情にあわせて輸出ビールを国内に振り

向けたにすぎない。

ある朝、新聞をひろげると、全面にキリンの麦芽、ホップだけのビール

「ハートランド」の広告が目に飛び込んできた。

「つくりたくて、つくりたくてたまらなかったビールです」これがヘッドコ

ピーである。

グリーンのボトムカラーにエンボスで浮き出たHEARTLANDの文字。

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流行や権威や既存の価値観に左右されることなく「モノ本来の価値に気付

く、発見する、自分にとっての本物を追求する」という考え方。麦100%、

アロマホップ100%の生ビール。厳選された麦芽とアロマホップのみを使

用。 素材の良さをそのままに、苦味をおさえた自然なテイストと澄んだ香

味、素直な味わい。HEARTLAND は「心」と「大地」のふるさとであり、

ほっとしたときに戻るところ。ビールがもっている自然で素朴なさわやか

さ。これが「ハートランド」だそうだ。

いちばん後発のくせに、このヘッドは何だ。ほんとうにつくりたかったら、

いのいちばんにつくりなさい。と広告の欺瞞に腹立たしく思った記憶が蘇る

が、妙なもので、それも半分懐かしくも思い20年振りにのどに通した。

広告はコンセプトで一朝一夕にして虚構のハートランドをでっちあげること

ができるが、原宿で44年も仕事と暮らしをもつと、「GHEE」に象徴する原

宿のいわば原風景は、それが痕跡になってもハートランドの古里としていつ

までも心の奥にしまっている。

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(初稿) 04/16 am 06 : 00

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