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2006/ Feb _ 09

手もちと手だて。

ワーカーズのOBには、あーだから出来ない、こうだから出来ないと手をこま

ねいて、四の五ばっかり言っていないで、出来ることをかき集めて、一日で

も早く仕事をはじめなさい・・・と口を酸っぱくして言っている。

段取りも、道具、機械が揃わないからまだできないと、あーだこーだいって

ると2,3年なんてアッ言う間にたっちゃうよ・・・と脅かしている。

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この3年を無為に過ごす (無為というのは靴づくりはしているけれど、その靴

で暮らしの糧になるようなことに結びつけていないことを指す )のが、初動の

2、3年の期間の大切さを考えるともったいないのである。

手元にある道具、材料、手だてだけで、あらゆる知恵を働かせ、やりくりし

て、ともかく始める。

なぜこの期間が大切かというと、「出来ることはこれしかないなら、これで

何とか手だてをつけよう」と手を働かせると道はかならず開けてくる。

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こういう見方もあるのかと、独自の言いまわしと論理の内容が、いつも肝に

いっている内田樹さんの言葉をなぞると・・・

「手持ちの限られた材料と手段で最高のパフォーマンスを達成するにはどう

したらいいのかということに知的リソースを集中できるのが機能主義者であ

る・・・」

そして「自分が動かないと何も始まらないんだ」という養老孟司さんの言葉

と合わせて、そうだったよなーと、いまから20 年さかのぼって思いおこして

みた。

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身体は四の五をいって動いてくれなくても、手は容易に働いてしまう。では

その手に、とりあえず働いてもらおうじゃないか、ここでぐづぐづしている

か、すぐ始めるかの別れ目になる。

私ごとになるが、10年間、既製靴の世界で既製靴に食わしてもらった履歴だ

けで、自分の手で靴などつくった経験などまったくなく、靴をつくる技法に

手を染めたことがない。諸般の事情から生き方を働きのいちばん小さな単位、

手にもどって、今一度自分の人生をリセットしなおそうと、踏ん切ったと

き、もう四の五の問題ではない、1、2、3と勢いをつけて手を働かせ見よう見

まねで靴をつくりはじめていた。

手で考え、手に教えてもらい、手に導びかれて、行き着くところまで行って

みよう、多分3年位はかかるだろう。

その3年間をどうやって暮らし向きを立てるか考えなければならない。

手づくり靴と手仕事は車の両輪でなければ技術とは言えない。

それまでの仕事場が明治通り6丁目の恰好の場であったので工房にして注文靴

の看板をまずあげる。それから手だて段取りを考える。手もちの駒でいかに手

づくり靴で仕事ができるか具体的に動きはじめた。

既製靴で使っていた自分の木型を全部、工場から引き上げる。

紙型は自分では切れないので靴の祖形を男女別に一点1万円で切ってもらう。

中古のセメンテッドの圧着機、スキ機、グラインダーの3点セットを手に入れ

る。

自分でやることは、足を計測し、木型をその計測値に合わせ、のせ甲、はり

甲で修整する。

サイズのグレーディングはコピー機の拡大縮小にまかせ、指定された甲革、

で裁断、スキを入れて製甲師にもちこむ。製甲代足分700円。

ツリ込みをしてソールは図面を描いて、底の加工屋にもちこんでつくっても

らう。材料、加工代が1000円ぐらい。

ソールを圧着して中敷にその人の名前を箔押ししてできあがり。

相当数の型紙をつくってもらったが、結果的には3つハトメの裏なし外羽根

に集約されて材料、外注代で3000円位で、売値は9800円。この値段で、

個々人の足の差異に思いをかけてつくつた靴の

グツドフイッティングが評判を呼び3年で2000足あまりつくった。

あの靴もこの靴もといって、数多くの型紙をきってもらい手当てをしたが、

思惑と実際とは違って、段々一つの靴型に集約されて、仕事の道筋を手さぐ

りしながらやっていると、仕事の道筋は自ずと手が教えてくれ、手が導いて

くれる。

いかに早く初動しなさいと言う意味は、手仕事は頭で考えても詮無いと気が

つき、手仕事の道筋は手がちょっと先を見せてくれる、それに沿って歩いて

いていきなさい、そうすると自ずと道は開ける。

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いつも話すことだが、この靴が3年間、靴の技法の修練期間の暮らしを支えて

くれた靴である。

farst-shoes060209

靴はフィッティングの技術であると、この靴を通して学んだ。そしてグッド

フィッティングとは、規定木型 (既製靴) のフィッティングではなく、靴を履

く人の足に思いをかけてつくることも学んだ。

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「自分が動かないと何も始まらない」

「出来ることはこれしかないなら、これで何とか手だてをみつけよう」

靴を一足もつくったことのないが、それでも出来る手だてと、もち駒を総動

員して、一日でも早く初動する。

そうこうしている、この3年の間に、外注の手助けなしに全工程を自分の手の

働きでやれるようにもっていった。

「手持ちの限られた材料と手段で最高のパフォーマンスを達成するにはどう

したらいいのかということに知的リソースを集中できるのが機能主義者であ

る・・・」この内田樹さんの言葉を目にして、そのように考えてやったわけ

ではないが手の機能に導かれ、手の機能ににひっぱられて、こまでやってき

たのは間違いない。

靴は歩く機能に添うものでなければならない。この言葉のように、靴の表層

を創る表現者といえども、手づくり靴のつくり手は機能主義者でなけれはな

らない。これは、とっても大事なことだと思う。

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靴はグッドウォーキングの機能をひきだす技法であると。

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今、事情があって注文靴を休止しているが、この一文を読み返してみて、

初心、初動の20年前にもどって、モゲワークショッブの原点の靴、3ハト

メ、外羽根、9800円の靴を復活させてみたいと思っている。

多分、同じ形に見えて、同じ9800円でも、あれから20年、培ってきたグッ

ドフィッティング、グッドウォーキング・シューズになっているはずだ。

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(初稿) 02/09 am 07 : 00
(脱稿) 02/09 pm 04 : 00

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