2005/ Jun _ 26

対岸の火事ではない。

イタリアの基幹産業であるファッション業界が、中国からの輸入枠の制度が

昨年末で期限切れとなり一気に輸入が増えた。

もっとも深刻なのは靴で、中国からの輸入にともなう許可申請の増加率が今

年、1 ~ 2月は1563%になっている。

「こんな天文学的な打撃は予想できなかつた。今すぐ、セーフガードを発動

してほしい」。

イタリア靴協会のレオナルド・ソアナ事務局長は青ざめた表情で訴える。

イタリアで生産される靴の90%は1万円弱の中級品以下で、これと同等の靴

が中国産だと4ユーロ(約540円)程度である。

この煽りで小規模工場が次々閉鎖に追い込まれている・・・

(2005年6月22日付けの朝日新聞朝刊の記事)

これは対岸の火事ではない。この時代は一夜明けたら何も無くなっていたと

いう、けして白昼夢でないことが起きる怖さがある。

この国も例外ではない、対中国関係はかなりまえから、すでにボディブロウ

が効いていて、靴の生産場面はバニシングポイント(消滅点)に向かってころ

げおちていくのは間違いない。

人生72年、長生きしていると、男子一生の仕事をやりあげていく美学ないて

いっていられない場面を数多く見てきている。

モゲは20年前、なぜ既存の靴市場と決別したか、この国の靴資本の脆弱さ、

と産業の体をなさない構造を知るにつけ、もはやこれまでと決別したのが20

年前の先見である。

これからの時代は、海上(市場)がいくら荒れ狂っても、深く潜行すれば海底

までは及んでこない。あたかも手づくり靴は、メジャー(海上)から離脱して

マイナー(海底)の領域で生息する深海魚に似ている。

深海魚の生態があまり知られていないと同じように、モゲが提唱している手

づくり靴を仕事にする [モゲプロセス] が、主張しているわりには理解され

ないのは、致し方ないかもしれない。

それは、海上 (既存市場の仕組み)で格好いいセーリングだけを夢見ているか

らであろう。海上はいつも上天気ではない、むしろ暴風圏にあるという現状

認知から、モノ・コトを見詰めなおさなければならない。

毎年、多くの製靴養成機関なら送り出される人たちは、小舟にのせられ、こ

の暴風圏に投げ出された漂流しているさまに似ている。

この記事の終わりに、フィレンツェのオーダー靴職人ロベルト・ウゴリーニ

さんが不特定多数にたいする量産靴と、特定少数にたいする限定靴と[すみ分

け」の道しかないと言っている。

この[ すみ分け] 論は20年前から言われていることで、目新しいことではな

い。

しかしオーダーだけではまだ波、風の影響下にある。

手づくり靴は、この波・風の影響をまったく受けない圏外の仕組みでなけれ

ばならない。

この仕組みをモゲは20年かけて熟成してきた。

それを「モゲプロセス」と言っている。

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