2005/ Jun _ 16

希望という地平 22

足というものは微妙な身体の運動をつかさどる、言わば礎石だと考える

その足の運動性を補完する靴は、用心深くつくらなければならない。

いかに用心深くつくるか、注文靴をつくるプロセスを追ってみよう。

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注文に訪れる人は、必ず履き捨てる手前の靴をもってきてもらう。

その靴から、歩きの偏り(癖)をみことから、歩きの動態が推測できるか

らである。これは足底挿板をつくる定性資料になる。

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靴と歩きに、どう云う不都合があるのか話を「良く聞く」ことから注文

靴は始まる。医学には基礎医学と臨床医学があるように、靴もまつたく

同じことで、注文靴は「良く聞く」という臨床技術でもある。

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このところ靴と足とのかかわりに関する情報の影響からか、

人の話を聞こうとせず自分の知識をゴリ押しする人、

自分でかってにキメつける人、

はなっから疑ってかかる人、

かって気ままに振る舞う人、

こういう人とは、いっしょにつくることが出来ないので、早々に退去し

てもらう。思いあがっているのではない。技術とは誠実をつくすことだ

と思うからである。このような人たちにはこのことが通じない。

また、いっしょにつくる姿勢を求めるのはは、注文靴は商品だと思って

いないからだ。

靴ができ、手わたして代金を頂戴して、はい、アリガトウゴザイマスで

チョンという訳にはいかないのが注文靴なのだ。

靴を手わたして終わりではなく、手わたしてから注文靴がは始まると考

えた方が的を得ている。

履いて(フィッティング)歩きを(ウォーキング)たしかめて不都合があれ

ば補正、修正しながら、注意深く手間と時間をかけて手直ししていく、

定量データでつくったから間違えがないといえないのが注文靴なのだ。

注文靴屋を殺すには、わけはない、「痛い」の二文字あればいい・・・

と言われるように、履いた人の「感じ方」が定量データよりも優先する

微妙な手直しは手で無ければ出来ない領域になる。

だからいっしょにつくると云う姿勢がなければならない。

そして「履き手」も「つくり手」も納得いく靴でなければいい靴とは言

えない。

歩きにどう云う不都合があるのか、とことん話をきいてから、足の計測

のデータをとる。手づくり靴は、別な言い方をすると、臨床技法でもあ

る。とことん話を聞き、自分の技量でどこまで可能か見極めなければな

らない。

足囲、足幅、足長の荷重位、非荷重位、を計測する。

歩行観察とフットプリントを取り、足の指がよく働らいているか、また

足裏皮膚の堅いところが無いかなどを調べ、歩きの偏りをおしはかる。

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データから木型をつくる。

左右の足にそれほど問題がない足、

左右に大きく差異のある足、

脚長差のある人、

難度の高い (外反母趾など) 足、

人の足は一筋縄ではいかない。

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木型ができると、足合わせのための靴を別に一足つくる

これは足入れをして(フィッティング)、歩るき(ウォーキング)をチエッ

クするための靴だ。

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注文靴は、靴そのものではなく、バランスの良いストレスをできるだけ

取り除き足に負担のかからない歩きを導きだす作業だと思って欲しい。

靴そのものではなく履き味をつくりだす作業なのだ。

チェックをしてさらに不都合があればなんどでも手直しをする。

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余談になるが、TV取材をしないことにしたのも、TVの威力は凄い、ま

ずオンエアされエンドマークが消えると同時から3日間、電話が切れ目

なく鳴り響く、大挙して押し寄せてくる。聞くところでは番組で紹介さ

れた店全部を回る処詣のマニアがいるそうだ。

仕事が出来なくなる。恐怖といっていい。

そんな番組から来た人で、今までこんな履きいい靴は初めてだといって

喜んでいた人が、注文靴といって友達に自慢すると「そんな靴は、駅前

で7800円で売っていた」とけなされ、そんなにお金をだすなら、輸入

ブランドのもっといい靴が買えると散々言われ本人もそんな気になって

「こんな安モノをつくって金かえせ」と言って来た人がいる。

いくら用心しても、最後に豹変する人がいる。

「モノではなく歩くコトガラをつくる」と言っても、理解する人は未だ

にこ少数派である。

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足に疾患があり靴屋の領域をこえる場合は、専門医の診断で作成した足

底挿板を装着する。

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足入れと歩きのチェックが済むと使用する革(色、質)とソールの加工に

ついて話合い希望した材料でつくる。

歩きにかなりの偏りのある人は、履いてきた靴と、つくった靴の両方

を、Fスキャン(歩行時の足圧測定をコンピューターのソフトに取り込だ

数字と性質を視覚的にデータ化)し比較してどこまで改善されたか確認

する。

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歩行時の靴は、甲が確り押さえられていて、蹴りだしたとき踵が確りつ

いてくる、この甲部と踵部の2所支持が必須条件になる。

この条件が備わった靴しかつくりません。妥協して2所支持の甘い靴を

つくったところで満足できる靴にはならない。

ヒールは3センチどまり、ソールはラバーのみでフラットシューズ・オ

ンリーです。

手づくり靴は、足の複雑な働きを、細やかに隅々まで気配りできる手

の働きがあるから意味があると思っている。

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この稿で、手づくり靴を仕事にする仕組みのうち、

自分の靴を自分でつくりたい人と手ほどきしながら一緒につくる。

注文靴も一緒につくる姿勢がなければいい靴はできない。

手づくり靴は、この「一緒につくる」ということを無視することが出来

ない。

つづく。

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