2005/ Mar _ 13
石田光江の近況から
京都の丸手(石田光江2期生)からデンワがあった。
ついこの間、石田はNHKのB1の視聴者参加双方向・スタジオ番組「女神たちのカフェ」で取り上げ
られた。
自分の時間をとりもどして、人生をを変えていく、テーマは「タイムマネージメント」。
石田は手でクツをつるコトで気持ちのいい自分の時間をとりもどし、、手の働きで生き活きとした暮
らしを手中にし、人生を変えた。この番組のテーマに相応しい生き方をしている。
番組側も石田を良くみつけだしたと感心する。
石田のモゲワークス時代の取材を受ける。
以前、あるTV局の取材打ち合わせを延べ3時間費やしたが断ったコトがあった。
手づくりクツブームに焦点を合わせ、あくまでクツ職人として、くつの作成過程を念入りにとりたい
TV局の取材意図である。すでに「あらすじ」ができていて無理やりこの「あらすじ」に押しこもう
とする。
「はじめに、・・・ありき」でも述べたが、私は手づくりクツは技芸をつくすコトではなく、手づく
りクツをつくるコトで人はどう生き方を変えていくか、その道筋をたどりたいと要求した。
各地で自分の想いどおりに手づくりクツをシゴトにしているワーカーズOBのシゴト振りを訪ねたいと
云ったがTV局の企画意図に合わなく中止になった。
「モノでなく、コトガラで人とのかかわりを深め広げていく」技術とはより良く生きるコト。
このコトがわからなく、大方のメディアはモノの技芸だけにこだわるコトが美学だと思っている。
今回のNHKの番組は、これまでと違い、「匠」とはより良く生きるコトを「巧み」にする、
モノから離れコトガラに視点をうつした番組になっている。
このような視点の情報が増えていくと、「つくる」とはどういうコトかが、「シゴト」は何かが、
技術をつたえる側も、受ける側も、よく理解してくれるだろう。
確かに映像情報としては、技芸をつくしつくる手元は絵になるだろうが、つくるコトの意味はその絵
にはない。
もうすぐ15期の期末になるが、モゲワークショップは卒業展はしないし、これからもしない。
既製靴の世界へ靴作家(シューデザイナー)として功名をもとめるなら、見せ場も必要たろうが、
手づくりクツは暮らしの用美を自分の手でつくり、つくるコトで人とのかかわりを深め広げていく、
日々を共に生きる [場] を地域につくることとだと思っているので、
これ見よがしに「どうだ、まいったか」展はする意味がない。
ある養成機関のサイトで卒業展に出品された靴のリアリティの無さより、モゲのディヤーズの、
自分の暮らしで履くクツの月例サイトのほうがリアリティがある。
いつも思うのだが、靴をつくるコトを特別な技量と思っている人は、モゲのディヤーズの人たち、
つまりクツをつくるコトを特別な技量と思わず、ごく普通の日常の営みにしているクツをどう見ている
のだろう。
そうそう、石田からのデンワの件は、朝日新聞の日曜朝刊の囲み記事「手仕事紀行・靴」で5回に
にわたり連載されるそうだ。今日がその3回目、感想を聞かせてほしいと云う件だ。
「ひざの上の木型をかえすと、ちょっと前までたよりなかった革が歩く姿になる」
「革をなだめながら木型に少しづつそわしていく」 履く人の暮らしにそわせるように。
「ここにはサンプルってないんです。履き手の願いを聞いて、一緒につくるようにしています」
コトバもクツも、ユックリ、ユックリ手渡していく。履く人の足に触れるコトからシゴトがはじまる。
「人がいないと、クツはできない、足がないと、ようつくらない」 足から始まり足で終わる。
「手の届くトコロから、新しいシゴトを育てていった」
「最初は、自分でつくるクツっていいな、と思っただけ、でもつくるコトを手につけたら、もう迷わな
いものを貰った気がした」
この記事の書き手の資質にも共感するが、石田のコトバには、さりげないが「暮らし」が生き活きと
刻まれている、手がかかわると暮らしはイキイキ・ドキュメントになる。
足がないとつくらないのが手づくりクツ。
足がなくてもつくれるのが既製靴。
モゲワークショップでは足がなければクツはつくらない。
他の養成機関では、足がなくても靴はつくる。
手づくりクツと既製靴の技法の違いを、またひとつ教えてもらった。
「はじめに、・・・ありき」のチャートをプリントとして、この座標に石田の現在置をピン止めした
ら、みごとに手づくりクツの領域におさまっている。
ピン止めが手づくりクツと既製靴の両側に散るようだと、それは手づくりクツと云ってはならない。
今日の出来事
ディヤーズとワーカーズで使用する甲革が入荷した。手わけして整理する。
甲革の目利きには、やはり年季がいる。よくクツにならない甲革を掴まされてくる人がいる。
かならず、「クツになるか」きいて買うようにと云っているが、素人の足下をみすかして、紛いモノを
平気で掴ませる業者がいるのも考えものだ。
モゲワークショップは、甲革にかぎらず材料はすべて潤沢むにストックしてある。ディヤーズもワカー
ズも素材は、そのストックから自由に選択できる。


